魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
翌朝ラスが部屋から出て来なかったのでノックしてみると、昨晩のようにまたくしゃみが聴こえた。

見かけによらず意外と健康で病気らしい病気はしてこなかったので、やや焦りながらそっとドアを開けてみると、ラスはベッドに臥せり、真っ赤な顔をしていて大焦り。


「チビ?お前風邪引いたのか?」


「ごほっ、わかんな…でも…寒いよ…」


がたがたと身体を震わせ、額に手をあててみると燃えるように熱く、さらに超焦ったコハクは氷水を取ってこようとして部屋を出ようとしたが…ラスに弱々しく手を握られ、踏みとどまった。


「俺の魔法で治してやるから力抜けよ」


「でも…ティアラが風邪くらいなら魔法で治さない方がいいって言ってたから…いい。コー、傍に居て…」


とにかく寒いらしく、コハクは躊躇しながらベッドに入り、ラスをぎゅっと抱きしめた。

…本来ならこんなことはいつものことだが…この1ケ月ほとんど触れ合わなかったので互いにどきどきしてしまい、ラスの顔は余計に真っ赤になった。


コハクはそんなラスの背中を擦ってやりながら、にやり。


「熱が上がったか?コーフンしねえ方がいいぞ、俺もコーフンしちまうから」


「しっ、してないもんっ!ごほっ、コーの、馬鹿っ」


だが抱きしめているうちに震えは止まってきた。

…もちろんそれはコハクが密かに魔法を使ったからだ。


――こうしてひとつのベッドで2人で居るのは…久しぶりのこと。

ラスが生まれた時から影となり、16歳になってからはほとんど一緒にこうして過ごしてきたこと…なんだか今では少し懐かしく感じられ、コハクは脚を絡めてあたためてやりながらラスの鼻を甘噛みした。


「チビが病気なんて珍しいよな。どした?腹出して寝たのか?」


「違うよ、コーが居ないから…いっつもこうして寝てもらってたから薄着で寝ちゃったの。ほら」


「!駄目だって!爆発する!!」


薄いピンクのネグリジェ1枚。

まんまとコーフンしてしまった魔王は呪文を唱えながらそんなラスを見ないようにまた強く抱きしめ、ラスを笑わせた。


「落ち着け落ち着け、落ち着け俺!コーフンしない!爆発しない!!襲わない!!!」


理性を呼び戻すのに、必死。
< 269 / 728 >

この作品をシェア

pagetop