魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクの体温が身体に移ってきて、天然湯たんぽを手に入れたラスは炊き枕のようにしてコハクに抱き着くと、さっきまで止まらなかった咳がぴたりと止まった。


「あったかい…」


「脚すっげえ冷たいぞ、もっとぴったりくっつけって」


ようやく理性を呼び戻すのに成功したコハクはなるべく視線を下げないようにして頬杖を突くとしがみついているラスの金の髪を撫でた。


「ねえコー」


「ん、どした?」


「あのね…あの…」


考えをまとめるのが苦手で、いつも切り出すのに時間がかかるのは毎度のことなので、コハクは急かしもせず、飽きもせずにラスの髪を撫でていると…



「今夜…コーの部屋に行っても…いい?」


「…へ?そ、それって…つまり…え?!チビ……いいのか?」


「うん。コー…この前は疑ってごめんね。私…コーが居ないとなんにもできないの。コーが傍に居てくれないと駄目なの。ずーっと一緒に居ようねって約束したのに…ほんとにごめんね。だから今夜から一緒に…きゃんっ」



まだ最後まで言ってないのに息もできないほどに強く抱きしめられ、ラスは何度もコハクの背中を叩いたが、首筋に顔を埋めたまま一向に動かなかった。

だんだん不安になってきて今度は背中を撫でてやるとようやく顔を上げたコハクは…心の底から嬉しそうな笑顔を見せ、ラスをぽーっとさせた。


「じゃあ今夜…待ってる。あーっ、チビが俺を襲いに来るのかーっ。こんなのはじめてだよな、どうしよ、むっちゃキンチョーしてきたっ!」


「女の子だけど襲っちゃうよ。待っててね」


「ん、それまで寝とけよ。眠るまで傍に居るから」


「うん、わかった。コー、忙しいのにごめんね。でもすっごく楽に…なった…よ…」


あっという間に眠りに吸い込まれ、コハクはラスが完全に寝入るまで引っ付き虫のようなラスの細い身体を抱きしめてやっていたのだが…


ラスが寝てしまうと途端に豹変し、歓喜の絶叫を呑み込みながら内心七転八倒していた。


「ち、チビが…俺を襲いに………、やっべ、今のうちに何パターンかシチュエーション考えとこっ」


――ようやくまたラスといつも一緒に居られる。

ようやく…
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