魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
つい先日とある場所で長い眠りから覚めた男は、さっきまでひとしきり大暴れしていた。


「くそっ、2年経っただと?それに俺は…」


やわらかいベッドに腰掛けていた男は赤い瞳を掌に落とし、ゆっくりとベッドに身体を沈めた。



「俺は…死ななかったのか」



――不死の男、コハク――


あの時不覚にもリロイから魔法剣で貫かれた時、死んだと思った。


だが実際は生きている。

生きて、自分を救った者たちに目覚めるまで見守られ、そして現在に至る。


「2年……チビ…」


元気でやっているだろうか。


今はリロイと結婚してゴールドストーン王国で幸せに暮らしているかもしれない。


だとすれば、このままラスとは会わずに離れていた方がいいかもしれない。


今も愛しているのに――


自分の2年はあっという間だが、ラスにとっての2年はとても長かっただろう。

何かに縋り、頼って行くしか術はなかっただだろう。



「チビ…そうか、俺はまた独りになったんだな」



そう独りごちた時、その呟きを打ち消す者の声がバルコニー側から聴こえた。


「あのお姫様なら誰とも結婚してないけど」


「…なに?どういう意味だ?小僧とは結婚してないのか?」


コハクを救った者のひとりは、笑いながら気持ちいい風の吹く空を見上げた。



「するわけない。今も待ち続けている。祈り続けている。信じ続けている」


「俺の…ことを?」



胸にあたたかいものが広がってゆく。


もうラスのことは諦めなければならないと思っていた心は、今もラスが自分のことを待ち続けてくれていることに喜び、震え、赤い瞳は感動で潤み、その者に寝返りを打った。


「泣いてる?感動して?」


「泣いてねえよ!…俺は…チビと会ってもいいのか?」


「まだ駄目。まだ色々足りない。コハク…お姫様と会ったらどうしたい?」


問われ、がばっと起き上がるとふつふつと笑みが込み上げ、指を折り数えだした。



「そりゃ決まってるだろ。アレして、コレして…ああっ、まだアレもしてなかった!そんで…ふふふふ」



久々に魔王、色ぼけ炸裂。
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