魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
最上階の塔のてっぺんがラスの部屋だ。

ピンク色の天蓋のベッドが目に飛び込むと、ベッドに小走りに駆け寄って思いきりダイヴした。


「やっぱりこのベッドが1番好きっ」


「じゃあグリーンリバーに運ぶかー。俺のベッド…ヤなのか?」


「ヤじゃないけどコーのベッド真っ黒だもん。コーがどこに寝てるのかわかんなくなる時があるよ」


誇大表現だが、確かに今ラスと一緒に寝ている部屋はテーブルも椅子もクローゼットも全て真っ黒なので、それがポリシーだったがラスのためなら簡単にポリシーを曲げられる魔王は一緒にベッドに寝転ぶと腕枕をしてやり、欠伸をした。


「ねえコー、デスさんは魔界?に帰っちゃったの?コーみたいなお友達は居るの?またすぐ会える?デスさんすっごく可愛かったしまた会いたいな。今すぐ会いたいな」


デスに夢中のラスにイライラ…いや、ここに居ないデスにイライラし始めたコハクは気分を落ち着けるために大きく深呼吸をするとラスの身体に腕を回して引き寄せた。


「あいつの住処は魔界で、友達は多分居ない。あいつは命を刈るのが仕事だから、みんな怖がって近寄らねんだ。全然喋んねえけど俺は好きなんだ。チビの影になる前はしょっちゅう呼び出して酒飲んだりしてたけど、もしかしたらしばらく会えねえかも」


「どうして?なんで会えないの?」


「…あいつはルールを曲げてくれたんだ。絶対曲げちゃならねえものを曲げたから、きっと制裁がある。助けてやりてえけど…あいつはきっとそれを嫌がるから何もできねえ。ベビーが生まれる頃呼び出してみるよ。それでいいか?」


「うん!制裁って…誰に?怖いことされるの?痛いことされるの?」


デスを心配しまくるラスの気持ちはわからないでもない。

きっと薄々気づいているのだろう。


自分のために制裁を受けるのだ、と。


――コハクはラスの腹を撫で回しながら天井に貼られた星空の壁紙を見つめ、優しい嘘をついた。


「痛いことされたとしても、ちくってされる程度だろ。それよかチビ、ソフィーに話しに行かなくていいのか?俺は超嫌われてるから会わねえほうがいいんだ。行って来いよ」


「うん、わかった。コー待っててね。どこにも行かないでね」


「ん」


小さなキスを交わすと部屋を出て行き、コハクはデスを想った。
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