魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
父を絶対的に信用してはいるが…コハクとやり合ったのは間違いない。

…自分の幸せを願ってくれているのならば、口喧嘩はいいとしても手を挙げるとなれば…別問題だ。


ラスは勇者として完璧なカイにぎゅっと抱き着くと膝から降りてコハクの前に立ち、カイに向かって両手を広げた。


「コーにはなんにもしないでね。私がここに来なかったらコーに痛いことするつもりだったんでしょ?お父様…コーは悪くないの。昔は悪いことしたかもしれないけど、今は悪くないの。だから…」


「…君は変わらないね。私やソフィーが魔王を煙たがるといつもそうやって庇う。私たちだって何も闇雲に責めているわけじゃないんだよ。魔王は昔本当にひどいことを沢山したんだ」


コハクは黙ってそれを聴き、ラスの頭にぽんと手を乗せた。


「チビには話したよな?ホワイトストーン王国のこととか」


「聴いたけど私にはコーが悪い人には見えなかったんだもん!お父様やお母様よりずっと傍に居てくれたのはコーだったし、コーが色々教えてくれたんだよ?歯磨きとか着替え方とかお風呂の入り方とか」


なんだかだんだん論点がずれてきて、カイは小さく息をつくと腕を伸ばし、ラスを招きよせるとほっそりとして大人の女性らしくなった手の甲にキスをした。


「わかってるよ。私たちは私たちのプリンセスには適わないのだから、好きなようにしなさい。クリスタルパレスの件さえ守ってくれれば、これ以上何も言わないから」


「お父様…お願いだからコーにはなんにも…」


「約束する。その代わり、君から魔王に“絶対悪いことはするな”と約束させて」


「うん、わかった」


そしてコハクに駆け寄ると転ばないようにすぐ腕を伸ばしてラスを抱っこした魔王に苦笑しつつ、肩で息をついた。


「ソフィーには直接君の口から伝えた方がいい。お母様は魔王が大嫌いだからパニックになるかもしれないけど」


「お母様ならわかってくれると思うから大丈夫。コー、行こ」


「カイ、後で2人で酒でも飲もうぜ。長年の隔たりを…」


「わかった。さあ、もう行きなさい」


カイが独りになりたがっているのを感じたコハクは踵を返すと出口に向かい、また庇ってくれたラスをぎゅっと抱きしめた。


「ありがとな」


「ううん。首痛い?まだぺろぺろした方がいい?」


速攻頷いた。
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