魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ラス王女、私たちはグリーンリバーへ向かいます。コハク様と無事に再会できたらグリーンリバーへ来てください」


「うん、わかった!」


ローズマリーがくれた白いローブを着て、大きなボタンがひとつだけついた淡いピンクのショルダーバックを身体にかけると準備が整った。


それまで腕を組んで見守っていた男が朱い鳥に何か囁きかけると、朱い鳥の身体が一瞬光り、気が付けば翼のある真っ白な馬が空中に留まっていた。


「さあ、これに乗って。異世界への扉まで俺たちが導く」


「はい。みんな…グリーンリバーで待っててね!コーと一緒にすぐに戻るから!」


「ラス…気を付けてね!」


男が手を引いてくれて白馬に乗り込むと、再び碧い鳥の姿に戻った男と朱い鳥、そして手を振っていたラスはすぐに姿が見えなくなった。


皆がラスを想い、コハクに会えるようにと願い、神に感謝した。


――そしてラスはものすごい速さで飛びつつも風圧を全く受けずに目を開けていられたので、遥か下に見える大地に驚嘆していた。


「すごい…!ねえ天使さん、どこに向かってるの?」


「…天使?」


碧い鳥が併走しながら聞き返してきたので、声で風が掻き消されないように大きな声で答えた。


「だって神様の使者って言ったら天使さんでしょ?それとも名前があるの?教えてもらえる?」


「いや、天使でいい。もうお前と会うことはないだろうから。なるべくなら会わない方がいい。大体神にまで届く声といったら絶望に染まった願いだけだからな」


「私の声…そんなに悲しい声してた…?」


「ああ、とても悲痛な声で手を差し伸べずにはいられなかったと神が言っていた。ラス…ひとつだけ言わなければならないことがある」


「え?」


遥か南…海しか見えなくなった時、そこにぽつんと小さな小さな島が見えた。

島全体が花畑で、そこに降り立つと今度は朱い鳥も人の姿に変化した。


…朱くて長い髪に、朱くて吊り上った気の強そうな瞳…

碧い鳥と並ぶと壮絶なる美男美女で、また見惚れてしまうと今度は碧い鳥の前に立ちはだかるようにして美女が立った。


「こら、邪魔をするな」


「だって…」


微笑ましい。
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