魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
何やら水面下でもめている朱い鳥と碧い鳥はどうやらつがいらしく、ラスは肩で息をついた碧い鳥の前に立って見上げた。


「つがいなの?」


「ああそうだ。俺たちのことはいいからお前にひとつだけ言っておくことがあるからよく聴いてくれ」


「うん、わかった」


夜なので真っ暗闇のはずなのに、花畑は白光していてちょこんと座ると2人も腰を下ろした。



「お前が今から行く場所は精霊界だ」


「え…、精霊界ってウンディーネさんやシルフィードさんが居る所?」


「そうだ。精霊界では想いの強さが鍵になる。お前の想いが弱まれば困難にぶつかり、想いが強ければどんな困難でも乗り越えてゆける。…無事に彼らの元へとたどり着けるか?」


「…うん、大丈夫。私にはコーとみんながついてるから大丈夫」


「そうか。可愛らしくて強い子だな」



瞳をやわらげた碧い鳥が頭を撫でてくれて、まさに“勇者様”な風貌の男に嬉しくてにこにこしていると…朱い鳥があからさまにむっとした顔をしたので、ラスはぎゅっと女に抱き着いた。


「わ、お、おい」


「碧い天使さんもかっこいいけどコーの方がかっこいいもん。だから取ったりしないよ」


「なに?そう……この男の方がかっこいいに決まってる」


ようやくまともに喋った朱い鳥の声は女にしてはハスキーで、ぎこちなく頭を撫でてくれるとラスは立ち上がり、グリーンの瞳に強い意志を現わした。


「行きます。天使さんたち…神様って本当に居るんだね。本当に…ありがとう」


「神がここまでお前を導いた。後は願いが叶うかどうかはお前次第だ。さあ、行け」


――朱い鳥と碧い鳥が大木と大木の間に両腕を伸ばして掌を翳すと、そこに楕円形の光が現れ、扉になった。


不思議なことにドアノブもついていて、ちょっと笑いながらドアノブを握り、回しながら2人に手を振った。


「もう会えないの?」


「ああ、会わない方がいい。愛しい者と会えるように俺たちも祈っている」


「うん。神様にも沢山沢山お礼を言っておいてください」


もっと沢山話をしたかったが、それよりコハクが精霊界に――


「今から行くからね、コー」


決意。
< 37 / 728 >

この作品をシェア

pagetop