魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
突然、胸が疼いた。


コハクが胸を押さえて首を傾げると、透明な膜に包まれた水の精霊ウンディーネはコハクの回りを飛び回りながら忍び笑いを漏らした。


「あら…気付いちゃったりしちゃった?」


「気付いたりしちゃったりしたっつーの。…チビが…ここに?」


「そうみたいねえ。誰が手引きしたのかしらー」


ウンディーネの口調は“それは私”と言っているようなもので、相変らず全身真っ黒な格好のコハクはベッドから勢いよく立ち上がった。


「チビを迎えに…!」


「駄目。おチビさんは自力でここまでたどり着かなきゃ駄目。誰があなたを救ってあげたと思ってるのよ。私たちよ?」


辺りを見回すと、シルフィード、ノーム、サラマンダーの姿もある。


あの時あの瞬間、コハクの命が散ろうとしていた時――彼らは全力でもってコハクを精霊界へ引っ張り込んだ。


こんなに簡単にも自分たちを召喚できるのはもうコハクしか居ない。

そして彼と居ると楽しかったし、乱暴で口も悪いがいつも大切にしてくれる大切な人間だ。



「お前たちには感謝してるさ。けどここは精霊界だろ!?だったら…」


「そうね。想像が現実になり、悪夢も現実になる。おチビさんが悪い未来を描いていればそれは形になって、想像がおチビさんの命を奪う。ここはそういうところよ」


「チビはひとりじゃ何もできねえんだよ。俺が居ねえと…」


「そう?そうかしら?まあ待ってなさいよ。本当に危なくなったら私たちが手助けしてあげてもいいわ。それにしてもおチビさん…ふふふふ」



――四精霊の瞳には何が見えているのか…彼らは一様に含み笑いを浮かべ、コハクをかなりいらっとさせた。


「なんだよ。隠し事すんじゃねえよ!」


「2年経ったのよ?おチビさん…綺麗になったわねえ」


「ま、マジか!どんなだ?教えろ!」


「今話したら面白くないじゃない。まあ楽しみにしてなさいよ」


…焦らしに焦らされ、魔王の妄想は果てしなく広がった。



「かーわいくなったんだろうなあ…。いや、綺麗になったか?む、胸も大きくなったりして。……やべえ!爆発する!」



…相変らず。
< 38 / 728 >

この作品をシェア

pagetop