魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイが同じ部屋で寝泊まりを――


何も起こるはずがないのに緊張してしまったティアラはベッドの上で正座をして、ソファーに座って剣の手入れをしているリロイを盗み見ていた。

皆と一緒に居る時のリロイは終始辺りに目を配ったりすぐ動けるように緊張状態にあったが、今はリラックスしていて時々欠伸をしたり腕を大きく伸ばして伸びをしていたりしている。


そんな小さな仕草も見逃さずに見ていると、さすがに熱視線を感じたのかリロイが苦笑いした。


「初日からそんなに緊張していたら疲れますよ。着替えたりシャワーを浴びたりする時は言って下さい、部屋のドアの前に立っていますから」


「!駄目!一緒に居て下さい!…バスルームのドアの前に立っていて下さい」


「ふふ、わかりました」


…リロイの手が大好きだ。

掌は大きくて硬くて、指は細くて長くて、男の手をしている。

やわらかい布で剣を丁寧に拭いているリロイの傍に行きたくてもじもじしていると、察してくれたのかソファーの隣をぽんぽんと叩いた。


「暇なら隣に来ますか?」


「いいんですか?じゃあ…」


嬉しそうに笑ってベッドから降りたティアラが小走りにソファーに駆け寄ろうとした時、誰かが乱暴にドアを叩いた。


「!だ、誰…」


「ティアラ、僕が出ます。あなたは奥に」


脚ががくがく震えたが、後ずさりしながら窓辺に寄ると、リロイがドアを開けた。


「!?どうして貴様がティアラの部屋に!?」


「ティアラ王女には結婚式の日まで指1本触れさせません。ティアラ王女はその誓いを立て、もし触れられたならば自ら命を断つと言っています。あなたはその約束を守れますね?仮にも王になる方だ、約束が守れないような小さな男なら…」


「ち、小さいだと!?…約束は守る!貴様こそティアラに指1本触れるな!」


「わかりました。早く部屋にお戻り下さい」


笑顔でフォーンの鼻先でドアを閉めたリロイは、“小さい”に過敏に反応したフォーンが面白くてつい肩で笑ってしまうとティアラが首を傾げているのを見てまた噴き出した。


「や、だって…影から“チビハゲ王子”って呼ばれてるの思い出したらつい…」


2人はくすくす笑い、一緒にソファーに座った。
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