魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
急速な勢いで去って行くリロイたちに手を振って見送った後、ラスはぎゅっと握られたしわしわの手を見下ろした。


「ラス王女、レッドストーン王国とゴールドストーン王国は共に強国ですから、良き絆を結びましょう。カイ陛下にぜひ私の今のお言葉をお伝えして頂いて…」


「自分で言ったらいいと思うよ。私は王女じゃなくなるし、あと、えーと…ううん、なんでもないよ」


口を濁したのは、“あなたとティアラは結婚できない”と言いそうになったから。

とてもじゃないが、フォーンは王の器ではない。

レッドストーン王国を引っ張っていけるような男には到底見えない。


「おいチビハゲ王子、俺の可愛い天使ちゃんにいつまで触ってんだ?マジでお前ぶっ殺すぞ」


耳元で地の底から聴こえるような低音ボイスが響いて沁み渡り、フォーンは気配を殺して背中側に立っていたコハクから飛び退るとコハクの瞳が一瞬真っ赤に光った。

だがラスは恐怖など一切感じていない様子で腰に手をあてて口角を上げて笑っているコハクの手を握って引っ張った。


「コー、行こ。“勇者様”になるんでしょ?どきどきしちゃう」


「なに!じゃあすぐ部屋に行こう!今すぐ行こう!」


がらっと雰囲気が変わったコハクとデスの手を繋いだラスは、呆然と立ち尽くすフォーンににこっと笑いかけた。


「コーは魔法使いだから怒らせると多分怖いよ。気を付けてね」


「多分ってなんだ!マジで怖いんだからな。あ、チビは知らなくっていいことか。うんうん」


ラスはコハクに本気で怒られたことがない。

もちろん暴言を吐かれたこともなければ乱暴なことをされたこともないので、本気で怒っているコハクを見たことが今までない。


やきもちを妬いて怒ることは数えきれないほどあるが、きっとコハクを怒らせると本気で怖いだろう。


「コーを怒らせたらどうなる?」


「俺を?チビが俺を怒らせるってことか?うーーーーん…、無いな!無い!でも浮気されたら浮気相手は確実に抹殺する。骨も残らず跡形もなく…」


「浮気?無いよ、無い。ねえコー…あの人の手…しわしわだった。ティアラをあんなしわしわな手で触られるのはヤだな…」


「その辺は小僧が居るし大丈夫だろ。あんま心配すんなよ」


無論、心配ご無用だった。
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