魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
元々ラスの部屋だった私室は今やすでに子供部屋に改造されているので、客室で寛ぐことになったのだが、ラスの笑顔が止めどなくなり、コハクはラスの頭を優しく撫でた。


「ま、俺の正体を伏せたのは正解だったな。…別に世界征服しようとした時は全員皆殺しにしようと思ってたわけじゃねえんだぜ」


「うん、わかってるよコー。でも王女の私と結婚するんだから、せめてグリーンリバーを統治してる人って教えてあげた方がいいと思うの。駄目?」


謎の街グリーンリバーを治めている人物が誰であるか未だに謎だったため、グリーンリバーに住んでいる人々以外はほとんどといっていいほどコハクが治めていることを知らない。

元々王国だったためにその敷地は“街”の比ではなく王国クラスなのに、犯罪率は群を抜いて低く、地上の楽園と呼ばれるグリーンリバーを治めていると発表すれば…心証はかなり良いだろう。

メイドが用意してくれたロッキンチェアに座ったラスが立ったまま見下ろしてくるコハクを見つめていると、コハクが肩を竦めた。


「別にいいけど…発表したらしたで、この王国からの観光客が増えそうだな。まいっか、チビがそうしたいなら、そうしていいぜ」


「うん!あのね、後ね…」


一緒について来ていたデスが膝を抱えてソファに座っていたのだが、テーブルの上に置いていたはずの果実を持ったお皿が空っぽになったのを見て笑ったラスは、ロッキンチェアを揺らしながらコハクとデスを諭した。


「今日はレッドストーン王国あげての結婚式なの。とっても神聖な式なの。だからね、真っ黒だと困るの」


真っ黒な男2人が顔を見合わせていると、ラスたちの着替えを持ったメイドたちが部屋に入ってきた。

2人分の男性用のスーツと、ラスの体形に合わせた淡いピンクのマタニティドレス。

白いシャツを見たデスが少し嫌そうな顔をしたが、ラスがにこにこしながらネクタイを手に首元にあててきて嬉しそうにしていたので、拒否できなくなった。


「今日はデスも一緒に参加しようね。リロイもティアラもすっごく綺麗だから一緒に見よ?」


「…………うん」


目地を下げたデスに笑いかけたラスは、大きな腹を見下ろして撫でながら、絶え間なく祝砲が上がる音を聴きながら幸せに浸った。
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