魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】

自然体のあなたと

時は少々前後して――


ラスが神の鳥たちと共にゴールドストーン王国を発った後、リロイは魔法剣が飾られている聖石の間へと行き、壁に飾られている魔法剣を見つめた。

…あれ以来この剣には触っていない。

ラスが血を吐くように絶叫し、その後呆然としているとグラースに羽交い絞めされ、ティアラが力を吸って異様に光る魔法剣に魔法で封印を施し、そして…ラスにも眠りの魔法をかけた。


この2年ずっと後悔し続け、どんどん綺麗になってゆくラスに焦がれ、恨まれながら過ごしてきた日々――


「…僕はお前にはもう触らない。もう触ることはない」


出奔の決意をした。


ラスが生きているかもしれないコハクと再会し、そしてグリーンリバーで無事に合流できたら…その後はもうゴールドストーン王国へ戻ることはない。


ここに居るとまたラスばかりを想って苦しい想いを抱え続けなければならないのだから。


「リロイ、行きましょう」


聖石の間の出入り口の扉付近からそっと声をかけたのはラスとお揃いのローブ姿のティアラで、ラスと同様とても綺麗になったティアラに微笑みかけ、踵を返した。


「申し訳ありません、お手間をおかけしました。…行きましょう」


「…この剣を見るのは2年ぶりです。今も胎動しているかのように脈打っています。魔王の力を吸っているからだと思います。…あなたはもうこれには触れないでください」


「ええ、もうそれはありません。あの時の僕の心が弱かったからあんなことに…」


扉を閉め、カイたちとのディナーを楽しむ時間も惜しんだリロイたちは城を出てカイとソフィーから見送りを受けた。


「こちらで馬車を用意したよ。ティアラ王女とローズマリー嬢をお守りし、真の勇者とならんことを」


「ありがとうございます。カイ陛下…ソフィー妃…お元気で」


「…ラスと共に必ず帰って来なさい。君はまだ王国の白騎士団の隊長の地位にある。これは命令だからね」


「カイ陛下…」


「行きますよ」


馬に乗ったオーディンに急かされ、リロイは着用した王国の紋章入りの鎧を見下ろすと頭を下げ、白馬に騎乗した。


何かが変わる。

そう確信していた。
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