魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
扉を開けて外へ出ると、花の芳しい香りが鼻腔をくすぐり、小島へと戻ってきた。


「なんか久しぶりの感じがするね」


隣に立っているコハクの腕に触れようとして手を伸ばすと、いつもなら返ってくる固い引き締まった腕を擦り抜け、ラスは掌を見つめた。


「コーに触れない…」


『ヒキガエルは俺の姿すら見えないはずだぜ。聴いてみろよ』


ラスにははっきりとコハクの姿が映っているのに、朝陽を浴びて瞳を閉じていたアンドリューの腕を引っ張ると隣に立っているコハクを見上げた。


「アンドリューはコーが見える?喋ってるのが聴こえる?」


「あ、そういえば黒い男が居なくなったけど何処に行ったの?」


『さっき四精霊から言われたろ?俺の姿や声はもうチビにしか見えないし聴こえなくなってるんだ。さ、こっからどうすっかな…。魔法も使えねえし船もねえし…』


さして危機感も感じずにコハクが欠伸をしながら言った時、後方からくすくす笑う声が聴こえた。



「待っていたぞ」


「あ…!朱い鳥さんと碧い鳥さん!」



ここまで送ってくれた神の使い…“神の鳥”が花畑の上に座っていて、ラスが駆け寄ろうとするとコハクが引き留めた。


「チビ、あいつらはなんだよ。………色男だなおい」


認めたくはないが、コハクの目からもラスに声をかけた金色の髪の碧い瞳をした男は壮絶な美貌の持ち主で、コハクの制止を振り切って美男と美女の間に座ったラスの肩に男が親しげに触れた。


「ずっと待っててくれたの?」


「ずっとというわけではないが、気がかりではあった。その男がお前の愛しい男か」


「うん、そうなの。2年間ずっとコーに会いたくて神様にお祈りしてたの。コー、この鳥さんたちが私の願いを叶えてくれたんだよ」


『鳥っつーか…まあいいや。チビをここまで運んでくれて助かったよ。ありがとな』


「いや、いいんだ。さあ好きな場所へ運んでやる。これがお前にできる最後の手助けだ。再びもうこうして会うことがないことを願う」


ラスが朱い鳥と碧い鳥に抱き着き、彼らは一様に瞳を細めた。


そして、リロイたちとの合流を迎える。
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