魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
程なくして、魔物の急襲に遭った。


群れで行動しているものは少なく、ただ個体それぞれがとてつもない強敵で、肉の無い骸骨の巨大な鳥が何度も上空から攻めて来ては剣が当たっても骨はばらけることなく元通りになる。


「きりがない!オーディン、あの魔物の弱点はどこに!?」


「首ですよ。首を叩き切れば倒せるはずです」


見事な足さばきで馬を操り、ローズマリーが馬車を森の中へと避難させると、リロイは馬の上に立って機会を窺い、急降下してきた魔物の背に飛び乗ると首をひと突きにした。


すると一気に骨がばらけ、着地した時にその骨で脚を取られて肩を強打すると馬車からティアラが飛び出してきた。


「リロイ!」


「ティアラ、魔法を。先を急ぐから治療は馬車の中でしてくれ」


「申し訳ありません。さあ、お前はグラースの後をついて行くんだぞ」


愛馬の鼻面を撫でると主に忠実な白馬はそれに大人しく従い、先を急ぐグラースの後を手綱を引かなくてもついて行き、ティアラがリロイの手を引っ張った。


「鎧を脱いで下さい。…私は背を向けていますから」


「はい。…ふふ」


――リロイが小さく笑ったので怪訝に思ったティアラが肩越しに振り返ると…リロイのたくましい上半身をまともに見てしまい、ついどもってしまった。


「す、すみません!」


「いえ、僕の方こそ。そういえばあなたとは一夜を共にしたことがあったのに照れるなんて…相変わらず可愛い人ですね」


余計にティアラの顔が真っ赤になってしまい、なるべく裸を見ないように注意しながら赤く腫れた右肩に掌を翳した。



「あれは…過ちでした。私の中ではあの一夜は無かったことになっているんです。だからもう忘れて下さい。夫になる方にも申し訳ありませんから」


「…え…、夫…?」



初耳だった。

目を見張って驚いていると、俯いた表情はまっすぐでさらさらな黒髪に隠れ、ただ口角が上がっていたので微笑んでいるのが分かった。



「私は王女です。レッドストーン王国を平和に導く義務があります。だから早く結婚して子供に恵まれて…」


「ティアラ…」



何故か、悔しい気分になった。
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