魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
馬車の中は沈黙が流れ、途中山道から外れてがたごとと馬車が揺れると、止まった。


「…外へ出ましょう」


「ティアラ…あなたの夫になる方は誰なんですか?どこの国の王子ですか?」


逃げるように外へ出ようとするティアラの腕を掴んで止めると、その腕がわなないた。


「…あなたには関係のないこと。でもとても優しくて私を心から想ってくださっている方です。あの方となら私…」


それ以上は言葉にならず、手を振り切って外へ出るとオーディンたちは簡易マットを敷き、休憩を取っていた。


「肩をよくしてもらったか?」


「…ええ。ですが…」


ローズマリーの隣に座ったティアラは明らかに作り笑顔で、そんなティアラを見つめながらグラースに問うた。


「ティアラは…結婚するんですか?」


「それらしき話は聞いたが、お前に関係あるのか?」


「関係は…ないですが…」


「だったら祝福してやれ。2年かけてようやくお前を吹っ切ることができたんだから」


何故かとても複雑な気分になり、木に寄りかかって飲み物を飲んでいたオーディンの隣に移動すると、顔色を読まれた。


「複雑な気分みたいですね」


「ティアラが結婚するんです。祝福してあげたいのに胸がもやもやして…」


「ティアラ王女がまだあなたのことを好きでいてくれていると勘違いしていたのでは?」


「…!」


「人の想いなど移ろいやすいもの。まあコハク様は違いますけど。あの方は永遠にラス王女を愛するでしょう。ラス王女のためなら世界をも滅ぼすことができるほどにね」


見透かされ、自惚れていた自身と、ラスを想っていたくせに結婚するティアラに裏切りのような気持ちを抱いてしまったことに心中は揺れ、リロイは皆の輪から足早に立ち去るとついてきた愛馬の鬣を撫でた。


「ラスもティアラも王女にも幸せになってもらいたい。僕はその手助けをしなければならないのに…醜い。こんな心の持ちようじゃ僕はまた過ちを犯してしまう…!」


まずは自身に打ち勝たなければ。

そうしてこそ、真の勇者となれるのだから。
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