ボクは桜、キミは唄う
教室に戻ると、ナカちゃんが参考書を開いて頭を抱えていた。

「あ、楓花!ちょっとここわかんないんだけど」

「どこ?」

ナカちゃんは、北川君と同じ高校に行くとばかり思ったのに、「女に二言はない」って、カッコよくいい放ったんだ。

志望校は変えないみたい。

卒業したら、本当にみんなばらばらになっちゃうんだね。

でも、みんなそれぞれがちゃんと前を向いて自分の道を歩き始めたんだ。

大切なものは何なのか、気づけたんだ。

「小林さん、次進路相談、先生待ってるよ」

「うん、ありがと」

私はナカちゃんのころまで行くと、机の上の問題集を覗き込んだ。

「あー、私もここ苦手」

「でしょ?ここ、ややこしいよね?あーもー!」

「でもさ、これを、こういう風に考えると」

「ああ、そっか!」

中学3年、9月。

窓から見える葉っぱが色づき始め、吹く風が引き締まって見えた。

もうすぐ、雪が降る。


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