ボクは桜、キミは唄う
6人席の広いテーブル。

右端に座った柚木君を見てから、迷ったあげく、そこから対角線上になる、一番遠い左端に鞄を置いてみる。

「なんで、そこ?」

そしたら、柚木君が突っ込んでくれた。

「えと、じゃあ」

と言って、柚木君と斜め向かいになる席に移動してみる。

「ビミョー」

柚木君がまた突っ込む。

「じ、じゃあ、失礼します」

仕方なく、柚木君の目の前の席に座ってみた。

いいんだろうか?こんなに近くで。

でも、ここに座ると柚木君からの突っ込みがないから、いいことにしよう。

チラッと見えた柚木君の隣に置いてある参考書は、赤ぺんと青ペンでたくさん書き込みが入ってた。

「今日、進路相談した?」

柚木君が聞く。

「うん」

「K高?」

「うん」

「そっか」

「柚木君はY高?だよね?」

「……」

あ、私が知ってるのは不自然だったかな?

「ナカちゃんが言ってたの。北川君と柚木君は同じ高校行くらしいって」

「あー……」

そう言ってから、柚木君はフッと微笑むから、ドキッとして目をそらしてしまった。

そーっと顔を上げてみると、もうノートに英単語を書き始めている柚木君。

ドキドキしてばっかりな自分が恥ずかしい。

勉強するためにここにいるのにね。


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