海上船内物語
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「本当に、良かったの?」
「何がだ」
椅子に座っているアランは、長い足を組む。
正面に座っているアルは、ただ妖しく笑うだけ。
「死神船にあーんな事書いちゃってさぁ」
「ああ、あの血痕の事を言ってるのか」
「他に何があるんだよ」
アランは、口元を妖しく浮かべた。
「なに、カイルはわしの一人娘だからなぁ。娘思いなんだよ、わしは。ガッハッハ」
「・・・本当、そっちの方がカイルを傷つけることになると思うけど」
アルの指摘に、アランは顔を顰めた。
「固い事を言うな、アル。時には、つかなければいけない嘘と言うものもあるだろ」
「その嘘がばれたらどうすんの?」
アルは真面目な表情になり、アランを責めるかのように聞いた。
「・・・・・・死ぬまで守ってやりたい嘘だからなぁ。嘘は突き通さないと、あとで虚しくなるものだ」
「初めから、そんな嘘つかなければ良かったのに」
「馬鹿言え。・・・やっぱり、カイルを死神船に叩き込んだのが、襤褸を出したか」
アランは大きな溜め息を溢し、瞼を閉じた。