海上船内物語


「お前、剣使えるじゃん」


そう言うと、カイルは苦笑する。


降りしきる雨が、そこに居る全員を叩きつける。

大きく揺れる船によろけながら、カイルはウルを見上げた。


「死神船と、この大海賊連盟との闘いが終わったら、私、アキにちゃんと言わないといけないことがある」

「は?」

「だから、絶対にここで死なない。ここで絶対に負けない。海賊になんか、負けない」

「何でいきなり?」


ウルはおかしなものを見るような目でカイルを見下ろす。

カイルはそれでも真っ直ぐウルを見つめた。


「だから、全力で頑張ることにした」


カイルは少し笑うと、またウルの横をすり抜けて、剣を振り上げる海賊を斬り捨てた。


風と波が船を大きく揺らす。

目と鼻の先の距離にある船が、大波にのまれて少しずつ沈没していくのが見えた。


そんなことをぼんやりと眺めていたウルは、飛び散った血に気を取り戻して、また剣を握り締めた。



「言いたいこと、ねぇ・・・・」


真っ黒な空を見上げ、少し溜め息をつき、ウルはまた海賊達に襲い掛かった。



< 219 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop