海上船内物語
「お前、剣使えるじゃん」
そう言うと、カイルは苦笑する。
降りしきる雨が、そこに居る全員を叩きつける。
大きく揺れる船によろけながら、カイルはウルを見上げた。
「死神船と、この大海賊連盟との闘いが終わったら、私、アキにちゃんと言わないといけないことがある」
「は?」
「だから、絶対にここで死なない。ここで絶対に負けない。海賊になんか、負けない」
「何でいきなり?」
ウルはおかしなものを見るような目でカイルを見下ろす。
カイルはそれでも真っ直ぐウルを見つめた。
「だから、全力で頑張ることにした」
カイルは少し笑うと、またウルの横をすり抜けて、剣を振り上げる海賊を斬り捨てた。
風と波が船を大きく揺らす。
目と鼻の先の距離にある船が、大波にのまれて少しずつ沈没していくのが見えた。
そんなことをぼんやりと眺めていたウルは、飛び散った血に気を取り戻して、また剣を握り締めた。
「言いたいこと、ねぇ・・・・」
真っ黒な空を見上げ、少し溜め息をつき、ウルはまた海賊達に襲い掛かった。