海上船内物語
作りが脆い階段を恐る恐る上がりながら、カイルは船長室の扉の前に立った。
そ、とドアノブに手を伸ばす。
目を固く瞑って、カイルはその扉を押し開けた。
入った途端、重苦しい空気。
そして沈黙が流れた。
「・・・・・・え」
カイルは異変を感じた。
ノックもしないで入るな、とか、勝手に入ってくるな、とかいつもだったら飛んでくる罵声が、今日は飛んでこない。
カイルは急いで船長室に駆け込む。
「アキ?」
まだ陽はあるのに、陽を通さない部屋の中。
カイルは固いベッドの上を覗き込んだ。
そして、目の前に突きつけられた、鋭い切っ先。
「・・・・・・・・っ、な」
それが剣だと把握すると、カイルはすぐに後ろへ退いた。
勢いあまって、床に尻をついてしまう。
ベッドからは、まだ剣が突き出ている。
「・・・・・・アキ?」
「あぁ、何だ、カイルか・・・・・」
ベッドから、低い声がする。
するすると剣が鞘に収められていくのが分かった。
「・・・・な、どうしたの?」
「貴様が勝手に入ってくるから、昨日の生き残りかと思ったじゃないか」
薄暗い中で、黒い影がのそりと動く。