海上船内物語


アキが寝返りを打ったのが分かる。


カイルは恐る恐る、床に尻をつけたままベッドに近付いた。


「・・・・・・で、何しに来たんだ、貴様は」


カイルはアキの顔を覗き込む。

しばらく声を出さなかった。


「いや、何で下に来ないのかな、って」


カイルはまじまじとアキの顔を見る。

アキは眉を寄せた。


「何だ、そんなに俺の顔を見て」


べたり、とカイルはアキの頬を挟む。

一瞬目を見開いたアキが、すぐにカイルを睨みつけた。


「なにす、・・・・」

「あーやっぱり!アキ、熱あるでしょ」


カイルは不敵に笑って見せた。

アキは何のことかという表情をしてみせ、カイルの手を払い除ける。


「だって、いつもだったら起き上がって私を追い払うのに、今日は起きないもん」

「貴様が俺の何を知っている」


カイルのにやけが更に増す。

緩んだ顔でアキの全身を見回した。



< 232 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop