海上船内物語
アキが寝返りを打ったのが分かる。
カイルは恐る恐る、床に尻をつけたままベッドに近付いた。
「・・・・・・で、何しに来たんだ、貴様は」
カイルはアキの顔を覗き込む。
しばらく声を出さなかった。
「いや、何で下に来ないのかな、って」
カイルはまじまじとアキの顔を見る。
アキは眉を寄せた。
「何だ、そんなに俺の顔を見て」
べたり、とカイルはアキの頬を挟む。
一瞬目を見開いたアキが、すぐにカイルを睨みつけた。
「なにす、・・・・」
「あーやっぱり!アキ、熱あるでしょ」
カイルは不敵に笑って見せた。
アキは何のことかという表情をしてみせ、カイルの手を払い除ける。
「だって、いつもだったら起き上がって私を追い払うのに、今日は起きないもん」
「貴様が俺の何を知っている」
カイルのにやけが更に増す。
緩んだ顔でアキの全身を見回した。