海上船内物語


「アキも体調崩すことあるんだ」

「早く出てけ、うるさい」


どんどんカイルの顔が緩んでいく。

そのたびにアキの表情は険しくなっていった。


「体弱ってるアキなんて、何も怖いところないじゃん、うわー新鮮」

「貴様、俺をおちょくってるのか?」

「怖くなーい、むしろ可愛い」


三日月目でアキを見下ろすカイル。


「・・・・・取り合えずどうしようか。このまま観察してるのも悪くないかも」

「おい」


アキが手を突き、起き上がろうとする。

が、すぐにベッドに突っ伏した。


「・・・・・・・どしたの?」

「別に」


ゆっくりとアキはカイルに背を向けるよう、寝返りを打つ。

その肩を掴んで、カイルは自分のほうに引き寄せようとした。


「っ」


アキの体が一瞬強張る。

すぐにカイルは手を離した。


「・・・・・・・・アキ?」

「いつまでそこに居るんだ、用が無いなら下に行ってろ」


アキは心底迷惑そうな顔で、カイルを見上げた。


「骨でも折れてんの?」

「そのようだな」


カイルの緩み顔はそこで終わった。



< 233 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop