海上船内物語
「アキも体調崩すことあるんだ」
「早く出てけ、うるさい」
どんどんカイルの顔が緩んでいく。
そのたびにアキの表情は険しくなっていった。
「体弱ってるアキなんて、何も怖いところないじゃん、うわー新鮮」
「貴様、俺をおちょくってるのか?」
「怖くなーい、むしろ可愛い」
三日月目でアキを見下ろすカイル。
「・・・・・取り合えずどうしようか。このまま観察してるのも悪くないかも」
「おい」
アキが手を突き、起き上がろうとする。
が、すぐにベッドに突っ伏した。
「・・・・・・・どしたの?」
「別に」
ゆっくりとアキはカイルに背を向けるよう、寝返りを打つ。
その肩を掴んで、カイルは自分のほうに引き寄せようとした。
「っ」
アキの体が一瞬強張る。
すぐにカイルは手を離した。
「・・・・・・・・アキ?」
「いつまでそこに居るんだ、用が無いなら下に行ってろ」
アキは心底迷惑そうな顔で、カイルを見上げた。
「骨でも折れてんの?」
「そのようだな」
カイルの緩み顔はそこで終わった。