海上船内物語


カイルはベッドの隅に丸まっていたシーツに包まる。


「・・・・ねぇ、後悔した?」


アキの返答は無かった。

変わりに、アキはカイルの方を振り向く。


「・・・・何が、“後悔” だ?」

「え?」


アキは真っ直ぐカイルを見つめた。

カイルはすぐに目を逸らし、肩を竦める。


「・・・お前の言う、“後悔”はなんだ?」


視線を泳がせたまま、カイルは小さく呟いた。


「・・・だって、気分悪いでしょ。親しかった人間を殺した奴なんて、どうやっても許せないでしょ?」


カイルは顔を上げる。

するとすぐ目の前にアキの顔があり、驚いたカイルはバランスを崩し、そのままベッドに倒れる。



「・・・・それが、お前の“後悔”か?」


アキは倒れて固まったままのカイルを見下ろし、続けた。


「お前が男として俺の目の前に現れたときも、お前が女として現れたときも、俺はいつだってお前を死神船に入れると言ったはずだ。


俺の“後悔”は、自分で決めたことを、あっさり折る事だ。

俺はお前を死神船の仲間にすることを決めた。それを、情けなく撤回するつもりはない」


足を組み、アキは吐き捨てるように言った。


「それって、私は死神船に居て、」


ひたりとカイルの首元に指が這った。

ちろりと蝋燭が揺れる。




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