海上船内物語
「別に、何とも思わない。俺らは政府がやれと言った事を遣っているまでだ。ここの人間を守る為にわざわざ闘いをしているのではない」
これでいいか、とアキはまた視線を真正面に戻した。
「あぁ、あと付け加えれば。俺は海賊共が死ぬ程嫌いなだけだ。海賊がこの海から居なくなればそれでいいと思っている。」
カイルが言葉に詰り、後ろを振り返ると、ウルが微笑していた。
「船長あんな事言ったけど、政府の命令なんて殆ど無視だぜ?」
「・・・・・・納得は、できる。」
ジャリ、とブーツが砂を咬む。
段々道を外れ、人気の無い路地に入ってくる。
「・・・・・・なぁ、俺ら今からどこに行くんだっけ」
「リゲが居る所だろ?さっき言ったじゃねぇか」
「だってよぉ、こんな人が少ない所に政府なんて・・・・・・」
ぴた、とアキの足が止まる。
前を見ていなかったカイルは止まったアキの背中に直撃した。
「いだっ!!何でいきなり止ま・・・・・・」
反撃しようと見上げると、アキの黒い瞳がカイルを真っ直ぐ見下ろしていた。
「此処が政府なのだが」
「はぁ?だって建物なんて・・・・・・」
「この敷地が、ヨーロッパ政府の敷地だと言ってるんだ」
がん、とアキは地面を蹴ってみせる。
カイルは「はぁ?」とアキに聞き返した。
「カイルは物分りが遅ぇなー。だから、船から降りた時、もう政府の敷地には入ってたんだよ!」
ウルが後付けをする。
カイルは瞬きを数回繰り返した。
「頭の出来が悪い」
「まぁまぁ船長、俺だって初めは驚きましたもん」
アキはまた歩を進めた。