ラブハンター☆
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「江本、俺と付き合って」
「気持ちは嬉しいけどごめんなさい!」

高校に入ってから何度目の告白を断っただろう。どうしても同じ年代の男の子に興味が湧かない。江本桜は高校一年生。フワッとした柔らかい髪、小さい顔に大きな瞳、色白で小柄な体格。ハタから見れば恵まれた容姿。でも彼氏は作らない。


「桜~。さっきのってD組の木村でしょ?学年で1、2を争うイケメンでサッカー部で性格◎の申し分ない奴なのに~。勿体ないっ!」
「別に~。気持ちないのに付き合うほうが失礼じゃん」


明日から夏休み。部活も特にしてないから宿題を抜かせばほぼ暇同然。本来なら彼氏がいた方が盛り上がるんだろうけど……。

「あんたモテるのにさ~。まだ例のお兄さんに片思いしてんの?」
「まっね♪」

桜には長年片思いをしている相手がいた。隣りの家のお兄さん。毬谷元気は5つ年上の21歳。桜の家が共稼ぎであまり家にいなかった為、お隣りさんには昔からよくお世話になっている。毬谷家は三人兄弟。その中でも真ん中の元兄ィに凄く懐いていつもべったりな桜を妹の様に可愛がってくれた。年を重ねるごとにいつしかお兄さんから特別な感情に変わり今に至るわけだが…


終了式が終わってそのまま友達達とカラオケ。帰宅したのは夜の10時。もちろん家には誰もいない。桜の両親はデザイナー。全国を忙しく飛び回っている為滅多に家に帰ってこない。誰に干渉される訳でもなく説教されたりもないから夜遊び朝帰りはざら。

-カシャン-
-バタン!-

門を開けるとちょうどお隣りのドアが開く。

「おっと、桜お帰りぃ♪」
「太陽……」


溜め息がでる。お隣りの住人は皆好きだけど、出来ればこいつとだけは関わりたくない。毬谷家の末っ子、太陽。桜より三つ年上の19歳。長身で長めの茶髪っていうかもう金に近い。今で言うイケメン。で、自由奔放の女好き。毎度毎度いろんな意味で周りをひっかき回してくれる。未成年のくせに酔っ払って何度か『喰われかけた』。どれも未遂に終わってるが、桜は一生恨む気満々。

「あ、ねぇねぇ。俺の一生のお願い聞いて☆」
「ヤダ」
「またまたぁ。俺と桜の仲じゃん?」
「寄るな」
「元気兄ィのとこに忘れ物、届けてくんない?」
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