ラブハンター☆
「え?あの元兄ィが忘れ物!?」
「そう。珍しいっしょ?店のキー忘れたらしくてさぁ。なんかの呼び出し食らって慌てて出てったってお袋言ってたからぁ……ありゃ女だな♪」

チラッと桜の顔を見る。

-女だぁ!?こいつ…あたしをからかってる。再起不能にしたろうか-


元気はとあるビルのカフェ&バーでバイトをしている。普段几帳面で忘れ物なんか絶対しないのに。よほど慌てていたのか…。

「そこでだ。この任務、桜に与えよう。心して遂行するように。では解散!」
「はぁっ!?」

キーの束を桜の手に無理やり押し込むと太陽は回れ右して走り去る。
「ちょっと!」
「俺デートで忙しいの~♪」

既に太陽ははるか彼方。桜はキーの束を見つめて溜め息をつく。前々から元気にはバーの時間帯には店に来るなと言われている。

「仕方ないっか~」

さすがに制服はまずいだろうと、取りあえず家にはいって着替える。胸元が大きく開いたトップスに超ミニスカ。普段からこんな格好が多いけど、元気には太陽(世の狼野郎供の例え)を挑発するような格好はやめろと言われる。


電車の駅一つ先、その駅前が元気の働くお店。昼のカフェは明るく気軽に入りやすいけどバーの時間帯はすっかりアダルトの雰囲気。中が見えないようになってるからどこに元気がいるかわからない。
-カシャン-

扉を開けてみる。一瞬圧倒される。照明がダウンされて薄暗くなったフロアに色っぽい女性やお金持ちそうな男性が思い思いにお酒を楽しんでいる。雰囲気に圧倒されている時だった。

「あなた!何してるの!?ここは子供が来るところじゃないでしょ!」

凄い剣幕の店員らしき女性に怒鳴りつけられる。むせ返るような香水の匂い。制服らしき白いシャツのボタンがはち切れそうな位胸がデカい。美人だけど勝気な顔を歪める。

「早く出て行きなさい!」

むんずと腕を掴まれる。伸ばした爪が腕に食い込む。ギリギリ引きずり出されそうな時だった。

「桜!?」

聞き覚えのある声。
「元兄ィ~!」

大股で近付いて来た元気に今度は腕を引っ張られ、スタッフルームに押し込まれた。

「何してんだ!バーやってる時間は来ちゃダメだって言っただろ!」
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