大人恋愛部

「じゃ、お疲れ。」


「ありがとうございました。
お疲れ様です。お先に失礼します。」


「明日遅刻するなよ？」


自宅アパート前に止まったタクシー
降りて振り返ると
いつの間にかネクタイを緩めた部長が軽く笑っていた

その顔は会社で見るものよりも幾分和らいで見えた

「部長もですよ。
気を付けて帰ってください。」


「ああ。
おやすみ。」


「おやすみなさい。」


挨拶を交わすと窓は閉まりタクシーは走り去って行った



テールランプが角を曲がって見えなくなるまで見送ると
なんだか急に寂しさと疲れがこみ上げて


私は足早に部屋に入った



いつも一人で
それを苦に感じることは無いのに


誰かと過ごした時間が終わってしまった後
急に寂しさを感じてしまうのは

何故だろう…？


「ただいま。」


返ってくる言葉が無いのを知りながらも出てしまう一言
電気を付けるとそこにあるのは朝と同じ風景

それが普通なのに
決して嫌では無いのに

何故だろう…

居心地のいいはずの空間が
寒々しく感じられ

そのまま浴室に足を向けた