大人恋愛部
八重洲口の改札前は仕事を終えたサラリーマンやOLで混雑していた

人ごみを抜けて適当な柱を背に周囲を確認する
望月君らしき人物はまだ見えない

確か職場は池袋とか言っていたし…
到着まで私より時間がかかるのは当然か…

何をするでもなく通行人を見ていると
思考は鮎川の事へ流れていく


部長と不倫…か…
いや、不倫じゃないか、部長離婚しているし

元々部長に憧れはあった
でも、それは社会人として…

それでも、心のどこでは
「部長と一番距離が近いのは私」
なんて思いがあった


なんだろう…
すごくモヤモヤ…イライラする

自分が一番だと思っていたのにそれは勝手な思い込みで
鮎川に部長を取られてしまった…

取られてしまった?

いやいや

部長は元から誰のものでもないし

まずは噂の真相を確かめて鮎川の事をなんとかしないと




…鮎川の事を何とか?

鮎川から何かを言われたわけでもないのに…
私がここで突っ込むのもおかしな話じゃない?


悶々と考え込んでいた私の視界に
ふとキャラメル色のマウンテンブーツが写る

「…考え事ですか?おねーさん?」

ゆっくりと視線を上にあげれば
小首をかしげて微笑む望月君が立っていた
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