約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



「花桜?」

「開けるよ」


その直後、開け放たれた障子。


雨に濡れた、土足のまま私の部屋までたどり着いた
花桜は、手に刀を持って険しい表情を浮かべてた。


剣を持つ手と逆の手が、
私の方に差し出されれる。



「瑠花、早く。

 私の手、掴んでっ!!。

 ほらっ。
 私たちは、こんなとこに居ちゃいけない」


今だ、その手を取る決心がつかない私に
花桜は剣を鞘におさめて腰に戻すと
両腕で私の肩を抱きしめて、ゆっくりと立ちあがらせる。


「……花桜……」

「ほらっ。
 瑠花、行こう?」



今も鳴り響く刀と刀がぶつかり合う音。



花桜に流されるままに、
自室を出ようとしていた足が、
ピタリとその場で止まる。



「花桜!
 やっぱり私、嫌よ。

 私一人、逃げ出すなんて
 出来ないよ。

 皆、鴨ちゃんの気持ちなんて
 何一つ解ってない。

 理解すらしようともしてないじゃない?」



そう言うと、花桜の腕を振り切って、
鴨ちゃんの部屋の方へと走っていく。





「瑠花っ!!ダメ。
そっちには行っちゃいけない」




背後から、花桜の叫び声が聞こえたのと
鴨ちゃんの体を沖田さんと
もう一人の誰かが貫いたのは同時……。 



崩れていく鴨ちゃんの体。



視線の端で捉えた鴨ちゃんは、
声にならない声でこう言った……。




『瑠花、笑ってくれ……』




床に完全に倒れこむ間際、
沖田さんの剣がもう一筋……光るように走った……。




鴨ちゃんの体から吹き出した血が、
沖田さんの着物をはじめ、周囲のものを染めていく。





「鴨ちゃんっ!!」



鴨ちゃんの傍に抱き着こうとする、
私の体を羽交い絞めするように花桜が必死に掴み取った。




「山波。何してんだ。
 早く、そいつを連れて行け」

「はいっ。
 すいません、土方さん。

 瑠花っ、行くよ。
 ほらっ、こんなとこ居ちゃだめなの。

 ここは私たち世界じゃないんだから」




花桜が必死に叫ぶ声が、
意識の向こうで、微かに聞こえる。




「また……君なの……。
 早く行かないと君も殺すよ……」




顔にかかった鴨ちゃんの返り血を
拭おうともせずに、沖田さんが冷たく言い放つ。
< 111 / 251 >

この作品をシェア

pagetop