約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く



「あっ……あの……斎藤さんは……」


斎藤さんは何者なんですか?
斎藤さんは明け方まで何をしていたんですか?


湧き上がる疑問。


だけどそれは最後まで紡ぐことなく、
口元を彼の手によって、塞がれる。



「それ以上は言わない方がいい」



彼はひそひそ声で諭すように告げる。
そして私の口元を塞いでいた手が離れていく。


「えっと……あっ、別件です。
 あの戦で命を落とした長州藩士たちはどうなったかわかりますか?」


気が付くと斎藤さんには、
本音がポロリと出てしまう自分に気が付く。



「長州藩士の行方?
 だが大っぴらに聞いてまわれるものでもないだろう。

 何か情報があれば伝える。
 暫く時間を」


『斎藤……』


そこまで斎藤さんが告げた頃、屋敷の中から剣術の稽古の準備をした
永倉さんたちが姿を見せる。


『おいおいっ、朝帰りかよ。お前』

「すいません」

『女遊びもほどほどにしとけよ。
 ったく』


なんてそれぞれが斎藤さんに話しかけながら
三人は道場へと姿を消していった。


そんな三人を見送ってもう一度、空を見上げる。


義兄をちゃんと供養したい。

屯所の手伝いが終わったら、
一人で義兄の行方を探しまわりたいって思ったけど
やっぱり難しいか。


義兄たち長州は御所を襲撃した朝敵扱い。



そうだよね。
朝敵となった長州の人たちに優しくは出来ないよね。



だからこそ……ちゃんと供養したいのに、
斎藤さんからはストップがかかっちゃった。



言わずに動けば良かった?


再度、深呼吸をして頬を両手で打ち付けると炊事場の方へと顔を出す。


「遅くなってごめん」


すでに朝食の支度を始めている二人に謝って、
井上さんにもお辞儀をする。



「舞、大丈夫なの?」


気にかけてくれる花桜と瑠花に、ゆっくりと笑い返す。
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