約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


お辰さん?

聞きなれない名前に私は戸惑う。



「うちは桔梗屋の辰路(たつじ)。
 義助はんのことは心配せんでもえぇ。

 あんたが、舞さんやね」



名乗る前に名前を呼ばれて、益々、戸惑っていると
お辰さんは、ゆっくりと私の手を取って自らのお腹を触らせた。



「義助はんのお子や。

 大火の火事で、全て燃えてしもうて焼け跡から見つけられたのは
 遺骨だけやった。

 けど……誰にも渡さへん。
 こうなる運命を義助はんは全て受け入れてた。
 
 見越してはった。
 どうぞ舞さんやったら義助はんも喜んでくれはるやろ。

 うちが見つけられたのは義助はんだけや。
 他のお人は福井の人が何処ぞへ連れて行ってしもうた」



斎藤さんが見つけ出してくれたのは義兄の恋人。


そして義兄は今、その人と長州贔屓の町人(まちびと)に寄って
ちゃんと守られてる。


お辰さんに連れられて赴いた場所は山荘の一角。


その場所に建てられたお墓。
静かなその場所で私はそっと手を合わせる。







義兄……私……もう一度長州に行こうと思う。
義兄とはちゃんとお別れできたから。

次は晋兄だね。

晋兄のところに帰るんだから、お辰さんが許可くれたら、
ちゃんとついてきてね。

文さんには内緒にしといてあげるから。







小さな墓石をゆっくりと見つめながら、
私はこの先の未来を思い描く。


真っ直ぐに見つめる先、辿りつく場所を信じて。



ゆっくりとお参りを終わらせると、
私たちはお辰さんお礼を伝えて屯所へと帰路についた。



ゆっくりと歩く帰り道。




暗闇に浮かぶ、お月さまが綺麗なそんな静かな夜だった。



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