約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


「花桜、どうだった?
 総司との練習」


そう言う瑠花は、何故か楽しそう。


「瑠花だったんだ……。
 おかげさまでズタボロ」

「ふふふ」

「多分、今日の私、お箸も持てないかも」

「だと思った……花桜の分はおにぎりにしておいた。

 おかずは焼魚だったから身を解して、
 おにぎりに詰めておいたから。

 味噌汁は吸うだけだから、食べれるでしょ」


そうやって切り返すのは舞。


「良くおわかりで。
 有難う、瑠花・舞」

「さっ、後は運ぶだけだけど今日の花桜は戦力にカウントしてないから、
 先に向こうに座ってていいよ」


言葉に甘えるように先に広間で着席する。


その日は、舞と瑠花の計らいで後片付けも休ませて貰って、
食事の後は自室へと戻った。


疲れすぎた体は、何かをする気力もなくて
そのまま布団の上にパタリと倒れて大の字になる。


額の上に両手を乗せてゆっくりと息を吐き出した時、
ふいに天井の板が一枚外される。



「花桜ちゃん」



ふいに姿を見せたのは神出鬼没の山崎さん。



「出たっ!!」

「出たって、そんな人を化けもんみたいに
 言わんでええやろ。

 なんや花桜ちゃんが気になって、忙しい仕事の合間に、
 様子見に来たちゅうにつれへんわー。

 花桜ちゃんったら、
 お帰りなさいの一言もないんやからなー」



そんなことを言いながら、
音も立てずにストンと私の傍に着地する。


「あぁー、こんなに打ち身の後つけて」



そう言うと何処から取り出したか手慣れた手つきで、
お酒に溶かしながら湿布していく。

「無名円(むみょうえん)や」


そう言いながら、次から次へと湿布していく
山崎さんは、黙々と処置をしながらゆっくりと問いかける。


「花桜ちゃん……どうしたいん?」

「えっ、どうしたい?って舞の事?」

「そう、舞ちゃんの事」

「舞の想いを叶えてあげたいよ。
 叶えてあげたいけど一人旅なんだよ。

 私や瑠花がついていきたいって言ったら舞に断られちゃった」

「そうかぁー。
 舞ちゃんの決意も固いっちゅうわけやな」

「うん」


その後、処置を終えた山崎さんは薬を片づけて言葉を続けた。


「なら、花桜ちゃんは舞ちゃんの為に何が出来るんや?」

「説得……舞も今は新選組に居る。
 だから長州に行きたいって言っても許可簡単に出ないよね。

 そうだ。説得だ。丞、有難う」

「なんや、久し振りに花桜ちゃんが名前呼んでくれたんは
 嬉しいけどな。

 後、旅に路銀は必要やで」

「うん、有難う」


反射的に丞に抱きついた私は離れた後、
自室を出るべく障子をあける。



「花桜ちゃん、ええ香りするわー」


なんて、ふざけた言葉を言いながら、
丞は次の瞬間、懐から取り出した布袋を放り投げた。


その布袋を受け取ると丞は告げる。



「乾燥したヨモギが入っとる。
 袋ごとお風呂の時に湯船にいれて浸かりや。

 肩こり・筋肉疲労・肉体疲労によー効くで」

「有難う」


受け取った布袋を、文机の上に置いて私は部屋を飛び出した。


確か、こういう時は……局長なんだから、近藤さん?
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