約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


「おいっ、お前ら。
 
 もっと火を持って来い」



お供の隊士たちに命じたかと思うと、
鴨ちゃんは、着物を翻して大和屋の前に居並ぶ。


騒ぎを聞きつけて、
駆け寄ってくる野次馬たちを前に大きく言い放った。



「壬生浪士組局長、芹沢鴨。

 大和屋庄兵衛、この者は不当な交易において、
 財をなし市場においての生糸高騰の原因を担いしもの。
 国外と手を結び、民の生活を脅かす大和屋を成敗するものなり」




大声で宣言して、その炎に包まれた
屋敷の前で腕を組んで仁王立ちし続けた。



騒ぎを受けて、駆けつけてきた
久しぶりに姿を見た土方さんたちを制して。




ちょっと……鴨ちゃん、
アンタ馬鹿でしょ。





大馬鹿ものじゃない。





大和屋が燃えて行くのを感じながら、
私は崩れ落ちて声を殺して泣いた……。





歴史を知ってても、
未来を知ってても、
私は……今を知らない……。





「瑠花、帰るぞ」





どれほどの時間が過ぎた後だろう。



今も大和屋の炎が燃え盛る中、
鴨ちゃんに声をかけられるままに
フラフラとその体を立ち上がらせる。


鴨ちゃんの腕の中に包まれるように、
守られるように、
その場所をゆっくりと後にした。





私……どうしたらいい?





この不器用な大馬鹿ものを。



ねぇ……神様。

神様がいるなら教えてよ。





歴史を変えてもいいですか?
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