約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


これって……京紅?ってヤツ。



沢山描かれている中で、
桜の花を描いたそれに手が伸びた。



凛としなきゃ。



ちゃんと背筋を伸ばして。


それを見るたびに、おばあちゃんの言葉を
思い出せる気がするから。



「それがええんか?」


コクリと頷いた途端、
山崎さんは、それをお買い上げ。


そのまま、私の掌の中にコトリと置いた。



「花桜が自分自身と戦いとーなったら使い。

 紅は、昔から呪いや。
 花桜を守ってくれるやろ。

 気分転換にもなるやろからな」



そう言うと、
そのお店を後にしていく。


その帰り道……ほんわかしていた時間は一転する。



目の前を通り過ぎる舞の後ろ姿を見つけ、
慌てて声を出して追いかけようとした
私の口を、山崎さんの手が塞いだ。



山崎さんに羽交い絞めにされるような状態で
追いかけることもままなくなった私が
そのまま連れて行かれたのは八木邸の近藤さんの部屋。


近藤さん・土方さん・山南さん。


その三人が、勢揃いしてる中で
山崎さんはまじめに報告してる。



そんな中にポツンと放り込まれた
私は……その場所ではじめて思い知らされた。


「山波くん。

 山崎君の報告によると君の友人は、
 長州藩士たちと一緒に居るようだね」



落ち着いた深みのあるトーンで紡がれる言葉。
でも……その言葉の先に逃げ道はない。


「かっちゃん。
 そんな甘っろょいこと言ってる場合じゃねぇだろ。
 山波の知人が長州のヤツラと一緒に居た。
 だったら、こいつらも仲間だろ」


「近藤さんも、土方くんもまだ決めつけるのは
 早いのではありませんか?

 山波くんも、そろそろこの世界で生きる
 覚悟を決めて頂かないといけませんね。

 この場所に留まると言うことはいつか、
 お友達とも一戦を交えるかも知れないと言うこと。
 
 山波くん、貴女はどうしたいですか?

 この先も、この場所でお友達と戦うかもしれない
 リスクを伴ったまま歩き続ける覚悟はありますか?」


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