華麗なる偽装結婚



………嘘だ。

あり得なくない。
阿美子の仕草のひとつひとつに反応しているくせに。


「……ええ。
おっしゃる通りですわ。

私も社長のような方は、恋愛対象ではございません。

すみません、解りきった事を何度も申し上げて」

「……」

……ほら。
言われるとチクリと胸が痛む。

彼女の拒絶がいちいち突き刺さる。

何でこんな風に思うのだろう。
今まで平気だったのに。

彼女が、無性に欲しい……。



「…社長?あの、北山支店の視察ですが、商品配列を見ていただきたいと営業二課の松本課長からメールが届いております。

システムキッチンを奥に並べて、新型トイレを道路側のガラスから見えるようにしたらと松本課長は………」


ボンヤリと彼女を見ている俺に気付いているはずなのに、彼女は平気な顔で仕事の話を持ちかけてきた。




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