華麗なる偽装結婚
「………」
彼は俯いたまま黙っている。
その手をそっと持ち上げる。
左手薬指にはエンゲージリングが二つ重なってはまっている。
それにそっと唇を寄せる。
「……阿美子。
もう、怒らないで。
悪かったよ」
叱られた仔犬のような瞳を私に向けて彼が呟く。
「いやだ…。そんなに落ち込まないでよ。
そうよね、…二回も出来たのだから喜ばないと。
ただ、初めの式であなたは別の誰かと誓いのキスを交わしていたけどね」
「………」
……あ。
また、言っちゃった…。
「あの、怜、いいのよ。
もう終わった事だし。
過去は忘れましょう」