愛を教えて
万里子は席を立つと、皐月に軽く会釈して食堂をあとにした。


「本当に申し訳ございません。とんだ粗相をいたしまして」

「いえ、本当に大したことではないので……」


化粧室に入り、メイドは洗面台でハンカチを濡らすと、万里子の前に屈み込んだ。何度も謝ってもらうと、逆に万里子のほうが申し訳ない気持ちになる。


「万里子様はお優しい方ですのね」

「いえ……そんなこと、は」


スカートの裾に付いた汚れを、軽く叩きながら落としていくのだが……。

ふいに、メイドの口調が変わった。


それはとても、万里子を褒めている感じではない。



思わせぶりな表情で万里子を見上げる顔――それは、尚子の命令で卓巳を狙う永瀬あずさであった。



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