愛を教えて
まさか、という思いと、やはり、という思いが万里子の中で交錯する。

だが、万里子に異を唱える権利はない。卓巳がこのメイドをベッドに引っ張り込んだとしても、黙って耐える以外にないのである。

そう思って見ると、あずさは素晴らしいプロポーションの持ち主だった。
制服のボタンが弾け飛びそうな大きくて形のよいバスト。細く括れたウエスト。男性の視線を惹き付ける体型にため息が出る。

かたや自分は……。
レストルームの大きな鏡に映る身体は、あずさに比べればなんとボリュームがないのだろう。

男性の目を惹きたいなんて、考えたこともなかった。
万里子が卓巳とベッドをともにすることなどありえない。そう思いながらも、胸の奥が焦げるような痛みを覚える。


「あたし、卓巳様から聞いてるんですよ。この結婚は偽装だって。電話を切ったあと、ベッドの上で教えてくれたんです」


あずさは自信満々の顔で言う。


（卓巳さんは本当にこの人に話したの？　それもベッドの上でなんて）


万里子の声は知らず知らずのうちに震えていた。


「本当ですか？　本当に卓巳さんが、あなたにそうおっしゃったんですか？」


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