愛を教えて
あずさはここぞとばかり身を乗り出し、青褪める万里子の耳元でボソッと呟いた。


「ええ……あたしの身体を、何度も何度も突き上げながら……。信じて欲しい、心から愛しているのはキミだけだって」



あずさの誘導尋問は尚子の差し金だった。

だが、それだけではない。
あずさ自身が少なからず卓巳に恨みを抱いていたせいだ。
何度迫っても、氷のような視線しか返さない朴念仁。男なら誰もがヨダレを垂らして欲しがるこの身体を惜しげもなく晒したのに。


『うちはいつからストリップ嬢をメイドに雇ったんだ! そんなもの見るに堪えない――さっさと服を着ろ! 着たら出て行け!』


しなだれかかるあずさの腕を掴むと、全裸のままドアの外に叩き出した。
彼女にそんな仕打ちをした男は初めてだ。


卓巳だけは許せない。この男を虜にしてやろう。それが無理なら仕返しを……あずさはそう決心した。


そして、そのチャンスは意外に早く訪れる。

尚子から、卓巳は『女を抱けない』可能性があると聞かされた。それは、卓巳の弱みを握り、言いなりにする絶好のチャンスだ。


ところが、卓巳は結婚相手として万里子を連れてきた。
しかも、あずさとは正反対の生粋のお嬢様。卓巳までこんな女を選ぶなんて。
怒りは万里子に対する嫉妬と羨望に変わっていく。


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