愛を教えて

(7)生い立ち

皐月はひとり息子の卓哉を非常に大事に育てた。
その卓哉が二十五歳のとき、卓巳の母、響子と出会う。響子は三歳年上で、当時ホステス嬢をしていた。

そしてすぐに響子は妊娠。

皐月は“優しくて人の好い息子”が女に騙されたと思っているが、所詮、女にだらしない、気弱で優柔不断な卓哉の不始末だった。


それが引き金となり、元々仲のよくなかった高徳と衝突。
彼はいきがって藤原の家を出る。卓哉は自分が父の会社にいてこそ、それなりの役職に就いていられるのだ、ということを知らなかった。


――高徳に息子はひとりしかいない。


卓哉と皐月は高徳から折れてくると楽観していた。
皐月は息子可愛さに連絡があるたび、金を送った。
だが思惑とは逆に、高徳は愛人に産ませたふたりの娘を本邸に引き入れたのだ。

そんな生活が数年続き、尚子に婿を取ることが決まった直後、皐月の口座は凍結された。
高徳は後継者を得たことで、息子への援助を完全に絶ったのである。

そのころ、卓哉一家は皐月の仕送りだけで遊び暮らしていた。
響子が夫と子供を捨てたのは、その仕送りがなくなったせいであった。


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