愛を教えて
その次は花だった。

結婚式の準備でたくさんの花に囲まれたとき、万里子はポツリと呟く。


『花束をもらうと嬉しいです。でも、薔薇よりかすみ草のほうが私は好きです』


それを聞いた卓巳は、万里子にかすみ草の花を贈った。

ほんの、軽トラック三台分ほど……。

都内の花屋からかすみ草を買い占めたのか、と思うくらいの量だ。
万里子は家中に飾り、大学の友人や近所にも配り、更には、実習でお世話になった幼稚園や保育園、小学校にまで持って行った。

卓巳は宗から、万里子が花の置き場に困っていると聞き、慌てて謝罪に駆けつけた。

それも、手にかすみ草の花束を持って……。


万里子は笑顔で感謝を伝えた。

花の量ではなく、卓巳の気持ちに対して。


万里子の希望はなんでも叶えてくれようとする。
卓巳の朴訥な優しさに触れるたび、万里子は彼への愛を深めていった。


< 236 / 927 >

この作品をシェア

pagetop