愛を教えて
だが……時折、我慢できないほど苦しくなる。

卓巳を好きな気持ちが心から溢れ出し、胸が痛んだ。
ふと気づくと、万里子はベッドの中で嗚咽を堪えるのに必死になっていた。

隣のベッドで眠る卓巳が恋しくて……。

初めて抱き締められ、一緒に眠ったあの夜を思い出す。恐ろしいだけの男性の腕が、心強く、温かいものだと教えてくれた。
もう一度、卓巳の腕の中で眠りたい。
卓巳を求める思いが次々に湧き出してきて、万里子は穢れた自分を思い知った。

男を知っている。

そんな女だから、いやらしいこと考えるのに違いない。
卓巳に知られたら軽蔑される。この胸の欲望だけは、卓巳に知られたくない。



万里子の傷ついた心は崩壊寸前だった。


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