愛を教えて
『あの女がいるから、卓巳様は家に戻られなくなったんですよ。太一郎様とはそれなりの関係だから態度もでかいし……』


卓巳がほろ酔いで帰ったとき、あずさは全裸で彼のベッドに潜り込み、誘惑しようとしたらしい。

その話を聞き、万里子はあずさが嘘をついた理由がわかった気がした。


『永瀬さんも、きっと卓巳さんのことが好きなんですね』


そんな万里子の言葉は、雪音から一笑に付された。


『そんな殊勝なタマじゃないですよ。まあ、お金は好きかもしれませんけどね』


それには、笑うしかない万里子だった。



「でも、気がつかなかったですねぇ。この家にクリスマスツリーがないとは」


雪音の声に、万里子はハッと我に返る。
何かに没頭している間は忘れられるのだが、少し時間が空くと、卓巳の言葉を思い出し、気持ちはどん底まで落ち込んでしまう。

これではいけない、と万里子はあることを思いつく。


「ええ、本当に。私もおばあ様に聞いたとき、ビックリしました」


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