愛を教えて
「信じてくれ。もし今度、僕が嫉妬に狂って馬鹿なことを言ったら、君は問答無用でこの家を出てくれて構わない。泣いて謝っても許さなくていいよ。二度とあんな愚かなことは言わないし、さっきのような真似もしない。君が好きなあまりにおかしくなってたんだ」

「でも……あの、秘書の中澤さんが」

「ああ、秘書を片っ端から食事に誘った。でもそれは、君の気を引くためだ。ランチ以外のプライベートな時間を共有した秘書はいない」

「雪音さんは? 部屋に呼びたいって」


(くそっ! なんであんなに余計なことを言ったんだ!)


卓巳は心の内で毒づいた。
後悔と反省を込めて、ひとつずつ丁寧に弁解して行く以外に手段はない。


「雪音くんのことは部屋付きのメイドとして信頼している。でもそれだけだ。彼女にも、他のメイドにも邪な思いは持ってないし、行動にも出てない。太一郎と同じだとは思わないで欲しい」


卓巳にはまだ、告白して許しを請う問題があった。
どうすべきか思い悩む卓巳の耳に、万里子の穏やかな声が広がる。


「嬉しい……嬉しいです。でも……私はあなたの妻になれるような女じゃないんです。穢れた女だから……もう、誰とも結婚なんて」


肩を落とし、うつむいたまま呟く万里子を見て、卓巳は自分の間違いが結婚式当日の失言だけでないことに気づく。


「万里子……君の相手は香田俊介じゃないのか? ……君はひょっとして」


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