愛を教えて
彼女に口づけたのは太一郎だったのだ。


『“愛して”やるよ。身体の隅々まで』


太一郎は下卑た笑いを浮かべ、万里子の服を脱がそうとした。


『お前の目ってそそられるんだよなぁ』


太一郎の声が頭の中をグルグル回る。

それはしだいに、四年前の男たちの声に替わっていく。


『お前が誘ったんだ。その目で……』


身体をふたつに裂かれるような痛みが、何度も……何度も繰り返し、万里子を苛んだ。


(いや……いや! 助けて、助けて、卓巳さん! 卓巳さん、卓巳さん)



「万里子! 万里子、しっかりしろ! 大丈夫だ、僕がいる。そばにいるから」


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