愛を教えて
「いや、どんな尤もらしい理屈をつけても、結婚の約束もせずに男に身体を許す女を、世間ではふしだらと言うんだ。君は亡くなった母親に恥ずかしくないのか?」

「は、母のことは関係ありません!」

「ふしだらで無責任な娘の行状を見て、草葉の陰で泣いておられるだろうな?」


父親で効き目が薄くなれば、次は母親を持ち出すことは当初からの予定だ。

相手の最も嫌がる点を見抜き、そこを突いて交渉を有利に持ち込む。相手の傷口に塩を塗り、土足で踏みにじるようなやり方。それが、卓巳の交渉術だった。


だが――。

それでは女性の心は動かないと、卓巳は初めて思い知る。


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