愛を教えて
「じゃあ犬小屋! あんな駄犬、鎖に繋いでおけばいいのよっ!」

「まあまあ、ゆうちゃん。でも……呼び出しもないし、ね。このままじゃお手当てもなくなっちゃうんだろうなぁ」


悠里を宥める口調なのが、二十五歳の広川美和子《ひろかわみわこ》だ。

美和子も望んで関係した訳ではない。しかし、割り切った今となっては給料が減るのは惜しかった。


それだけではない。

あれ以来、夜遊びにも行かなくなった。

まだ数日とはいえ、外に行くのが大好きな若いかんなは、このまま夜の外出がなくなったらどうしよう、と騒いでいたようだ。




聞くとはなしに、そういった話が耳に入ってきた。

万里子はこの邸のすべて人たちが、太一郎の罪を容認していたのだと知る。


「お食事はどうされてるの?」


ふいに話しかけた万里子に、ふたりは飛び上がって驚く。


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