愛を教えて
万里子は美和子たちに太一郎の部屋の掃除を頼み、雪音とふたりで自室に戻る。

そして、雪音に急かされるように、寝室を覗き込んだ。


「まあ! どうしましょう、こんな……」

「ある意味わかりやすいですよね。卓巳様の意思表示って」


万里子の目に飛び込んできたのは……天蓋の付いた、スーパーキングサイズのベッドだった。


一点ものの輸入家具でイタリア製。それも、かなり有名な工房の作品で、イタリア貴族が発注してキャンセルになった品ではないか、と業者が話していたらしい。

ベッドは縦横のサイズがほとんど変わらない、正方形に近い形である。しかも、一辺が二メートルを楽に超えていた。

バルコニー側の窓を全開にして、斜めにしてようやくマットレスが入ったのだ、と雪音は愉快そうに話した。


確かに、今朝、卓巳が出勤するときに言っていた。


『寝室のレイアウトを変えたい。業者を呼んでおいたから、彼らに任せてくれ』


その言葉を雪音に伝え、様々な手配は彼女に任せていたのだが、まさかこんなこととは思わない。

万里子は天蓋の近くまで歩み寄り、四本の支柱に目を凝らした。

濃いブラウンでマホガニー材の支柱は、それぞれに美麗な細工が施され、天蓋から吊るされたカーテンが留められている。カーテンはチュールレースだが厚手と薄手の二重になっていて、下ろせば内側の様子はシルエットでしかわからないだろう。


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