愛を教えて
万里子はいつも以上の笑顔で帰宅した。

ハネムーン用に、普段の万里子からは想像もできないくらいセクシーな下着を購入したのだ。
卓巳の驚く顔が今から目に浮かぶ。


「お帰りなさいませ、奥様」


万里子はその瞬間、ドキッとした。


邸内がただならぬ雰囲気に包まれている。
出迎えた浮島の顔にも、緊張の色が浮かんでいた。

浮島だけじゃない。他の使用人たちが投げつける視線もそうだ。

「お帰りなさいませ」と声を揃えるが、その裏に見え隠れするのは、疑い、怒り、侮蔑そして同情。

複雑な視線に晒され、万里子は息を飲む。


ほんの数時間前、この邸を出たときはいつもどおりだったのに……。


(いったい、何があったの? 私が何をしたというの?)


「あの、浮島さん。何かあったのかしら?」

「はい。旦那様が、奥様が戻られましたら、何はさておき、お部屋に戻られるように、とのご命令でございます」

「え? 卓巳さんがもうお帰りなの?」


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