愛を教えて
このチャンスを尚子が逃すはずがない。ここぞとばかりに彼女は声を張り上げた。 


「まあっ! じゃあやっぱり事実ですのね。皐月様は、あたくしの言葉を信じてくださらなかったですけど。こうして万里子さんご自身がお認めになったんですもの!」


皐月は万里子から視線を逸らし、何も言わない。

尚子は更に、


「卓巳さんにもお尋ねしましたのよ。以前、あんなふうにおっしゃってたんですもの。先ほども庇っていらしたけど……卓巳さんも騙されていたのかしら? それとも……」



万里子が戻る少し前、邸内はこの尚子の爆弾発言で話題が持ちきりだった。

結婚前に卓巳の言った言葉『万里子は何も知らなかった』それを引き合いに出され、尚子は再度卓巳に詰め寄った。

だが、卓巳は頑として撤回せず、そんな事実はない、と言い張った。



万里子はようやく、自分がとんでもない失敗をしたことに気づく。

卓巳が先に話し合おうとしたのはこの件だったのだ。

更なる失言を恐れて、万里子はひと言も口にできない。


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